『キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン』 純粋でナチュラルであり続けたがゆえ
12年の歳月を費やして、キャロル・キングがみずからの言葉で綴った自伝『ナチュラル・ウーマン』の日本語版が2月26日に発売されます。
4部構成全89章の大著で、日本版は全544ページ。全米では2012年に発売され、初版35万部の大ベストセラーを記録中とのこと。
読みはじめたとき、キャロルの紡ぎ出すメロディのような、ある意味「ファンタジー」のような人生を勝手に思い描いていました。そう、ミュージシャンとして大成功した「歌姫」のお伽話のような、ちょっと苦いけど甘くて白いチョコレート色の人生。
読み進むうちに、残念ながら、期待はみごとに裏切られていきました。
4回の結婚と4回の離婚。わずかこの11の文字に凝縮されてしまう彼女の私生活はあまりにも壮絶なものでした。ただ、純粋でナチュラルであり続けたがゆえに…。
「アメリカン・ポップスの黄金時代」「ブリティッシュ・インヴェージョン」「フォークロック」「シンガー・ソングライター」。さらには、「ラブ&ピース」「連帯」「共同体」「個の時代」「自然のなかで生きる」…、美しく喧伝された数々の言葉の裏で、時代に翻弄され、多くの人々がその渦に巻き込まれ、輝き、そして苦しんできたのですが、キャロルの人生もまた例外ではなかったようです。
キャロルの歌声に耳を傾けながら、その人生をたどれば、彼女の歌になぜ人々が感動するのか、その理由がおぼろげながら見えてくるような気がします。そして、歌を、言葉を紡ぐことが、どれほどみずからの魂を切り刻んでいることなのかも…。
文/広田寛治
『キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン』 著・キャロル・キング 翻訳・松田ようこ
2013年2月26日発売予定
発行:河出書房新社
本体3,800円
河出書房新社やアマゾンのウェブページでもくじを見ることができます。
【著者キャロル・キングについて】 1942年2月9日ニューヨークのブルックリン生まれ。15歳でレコード・デビュー。16歳からジェリー・ゴフィンと共作を始め17歳で結婚。1960年18歳で長女を出産するとともに、シュレルズ「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」でゴフィン=キング初の全米1位を記録。1964年までに「ロコモーション」(リトル・エヴァ)、「チェインズ」(ビートルズもカバー)など全米トップ40に20曲以上を送り込む。1969年にはアルバム『ライター』でシンガー・ソングライターとして本格的な活動を開始。1971年『つづれおり』の大ヒット(全米1位15週連続/2200万枚の売上)で70年代以降の音楽シーンをリードする存在になり、現在に至るまで数々の名作を世に送り続けている。
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